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昨日見た夢 〜すっごい現実感〜 |
(ちょっと長いよ。)
今日も職場は慌しい。
引っ切り無しに鳴る電話、積み上がった書類、未清算の領収書。
机の上の散らかりようには目も当てられない。
日程を書いてあるホワイトボードには既に朝と違う予定が書き加えられている。
ウチは従業員が数百名の部品メーカーだ。
自分の仕事は期日、納品、調整から取引先の新規開拓まで様々な事をやる。
そう、人員削減の為、多少の仕事は自分の範囲でカバーしなけれればならない。
だから取引先とやり取りをする上で新規顧客の開拓をするという営業方針になっている。
仕事にのめりこむタイプの自分は忙しさの中にも多少の充足感を見出せる。
しかし、充足感が全てじゃない。現に休日も上手く休めてないので気疲れしている。頭か心の一部が麻痺してる感じだ。
愚痴っていてもしょうがないので、仕事に戻るか。
ただ、ワイシャツの第一ボタンをそっと外すを忘れない。
いつ来客が来てもいいように見た目にはわからない程度で、だ。
すると電話が鳴り、でてみると営業に出ている同期からだった。
話の詳細は憶えてないが、どうやら取引先と揉めているみたいだ。
要約すると、どうもその取引先が二度目の不渡りを出し倒産が現実になりそうだとのこと。
・・マズい。そこの取引先はかなり有力でウチの部では重宝してきたのだ。
同じ規模の会社を見つけるのは容易な事ではない。
例え見つかったとしても、取引先になるまでには幾分かの時間が必要だ。
もちろん、倒産は突然の話ではない。薄々そんな感じはしていた。
何年か前に業績が悪化したものの、ある程度の経営体力があったから持ちこたえていた様なものだ。
そんな会社だがウチには簡単に切れない事情があった。
限られた人員、限られた時間の中で代わりを見つけるのはかなり厳しい。
少なくとも取引が出来る状態である以上は頼らざるを得ない。
そこにきてこの倒産の話。
ウチの部の命運は悪い方へと大きく舵をきる事になった。
・・数日後、会社が今期の業績予想を下方修正する事を発表した。
その原因はウチの部だ。俗に言う“不採算部門”と言うやつだ。
元々、景気が上向いてもそれほどオメデタくならなかった会社だったが、この前の“取引先が倒産”の話が響いてるらしい。
数日してやっと専務や社長、その他幹部に伝わったらしい。
その時に今回の『業績予想の修正』と今後の対応策が話されたらしいが、所詮、現場に下りてくる決定ではないのだろう。
それに、決定一つにイチイチ反応してたら仕事が手につかない。
すると、部長や課長が前に集まりだした。
「みんな、その場でいいから、手を止めて聞いてくれ。」
もう一度部長が全員に声を掛ける。
「みんな良く聞いてくれ。」
部長が話始めるとタイミング悪く電話が鳴る。
すかさず近くにいた女性社員がでて、すぐに折り返す旨を伝えると電話を切る。
「いいか? よし。」
改めて部長が仕切りなおした。
「先日、ウチの取引先が倒産した事は皆知っていると思う。」
不穏な空気が拡がる。
「その事が上層部に伝わり、取締役会が開かれた。」
社員達は一応に知っているようで、無言だった。
「取締役会議で今期の業績の下方修正と対応策が決定された。我々の部門の売却だ。」
これには流石に動揺が拡がる。
「会社としては財務体制の健全化、人員の再整理、不採算部門の売却を行い銀行からの再建支援を受ける事になる。」
その後の話は最早どうでもいい、頭からすり抜けていくばかりだ。
「・・・。・・・、・・・・・・・・・。」
部長の話は続いている。
「とりあえず以上だ、詳細はまた伝達する。仕事に戻ってくれ。」
その言葉でハッと気付くと、落ち着く為にとりあえず席に座る。
席から見ると一様にみんなの顔は暗い。
当たり前だ。会社の状態からいって今の部門の人間をどこに回すというのだろうか。
実質、『全員クビ!』と宣告されたようなものだ。
・・
・・・
「お先に失礼します。」
終業時刻を迎え、一人また一人とオフィスを後にしていく。
人影がまばらになり、数人を残すのみとなった頃、不意に思った。
自分もキリをつけて帰ろう。気力が湧かない。
沈む気持ちでカバンに書類を詰めていると誰かが肩を叩く。部長だ。
「お疲れさん。今日は大変だったな。」
(いえ、部長の方こそお疲れさまでした。)
「あぁ、こんなに惨めな気分は久しぶりだ。」
(そうですね、みんなも同じ気持ちだと思います。)
「そうだろうな。みんなもショックだったろう。」
(・・・。)
「さすがに今日のあの時には言いづらかったんだが、ここだけの話な?」
(はい。どうぞ。)
「実はこの後の処理の話もあらかた付いてる。この部門は売却先で統合される。」
(そうですか。)
「近々、売却先の社員が資料の引き上げと共に引継ぎに来る。
そしたら、案内と引継ぎ作業をしてくれ、みんなに伝達もよろしくな。」
(はい。わかりました。)
「それで、我々の今後の待遇についてだが・・」
(・・・はい。)
部長は一旦言葉を切る。わざわざオフレコにする位だから期待できそうもない。
「この会社に残る事はできない。他社への再就職の世話も出来ないそうだ。」
・・思ってた通り、最悪の結果だ。
『クビ』になった上に『無職』で放っぽり出される。
会社の冷たい仕打が、さらに自分を深淵へと追い込んでいく。
「それでな、お前はまだ若い。今から再就職先を見つけろ。わかったな。」
部長はそれだけ言うと出口へと向かう。
翌日、出社してオフィスのドアをくぐると、多少の雰囲気は違えどいつもの忙しい雰囲気だった。
部門の整理という新しい仕事が増えたおかげでいつも以上の慌しさかもしれない。
しばらくすると来客が来た。
例の売却先の社員だ。思ったより早く来たな。
案内を頼まれていたので上着を着るとその社員達を出迎えた。
年齢は自分と同じかやや上、中には年下らしき社員もいる。
一通り案内と段取りを説明すると、引継ぎ作業に入っていった。
自分の席に引継ぎに来たのは、切れ長の目をした冷たい印象の男だった。
各書類と現在の状況を説明し後は細々とした仕事を片付けると引継ぎは終わった。
(以上で引継ぎ作業は完了です。)
「大体把握は出来ました。ご・く・ろ・う・様・で・し・た。」
平然とした表情を装っているが、“蔑み”とも“憐れみ”ともとれる感情が込められていた。
胸倉を掴みたい気持ちでいっぱいだったが何とか耐える。
取り乱しても始まらない。
無言で残りの資料を手渡すと男はさっさと席から離れていった。
それから後は猛烈に仕事に打ち込んだ。
全体が引継ぎ作業の混乱も相俟っていつもの半分のペースもこなせていない。
おまけにさっきの男の薄ら笑い顔がチラつく。
感情を逆撫でされるようなイヤな表情だ。
気付くと部屋の照明は落とされていた。
同僚の退社に気付かないほど打ち込んでいたらしい。
真っ暗なオフィスに煌々と照らされるデスクスタンドの前で昼間の光景が浮かんでくる。
あの目、あの表情、あの声。
(ちくしょうッ!!)
悔しい想いが胸の奥底から溢れ出てくる。
一度だけ両手で机を叩くと今度は涙が溢れそうになってくる。
何でだ!?数日前までは何ともなかった。それが今ではこんな有様だ。
絶望と悔しさと虚しさが交じり合ったような複雑な感情がジンワリと染み出してくる。
引継ぎに来た男が憎いのではない、何より自分の抗えないところで自分の進路が閉ざされた現実が悔しかった。
まさに悔しさで胸をかきむしりたい気分だった。
真面目に会社に勤めてきたし、そこそこの業績も上げてきたつもりだ。
満足とは程遠い給料で貯金もしてきたし、この先の人生設計だっておぼろげながらしてきたつもりだった。
それが今ではたった一ヶ月先も見通せない。
室内の暗闇がそのまま自分の将来を暗示しているようだ。
この時、初めて目に見える“絶望感”というものを味わったかもしれない。
次の日もそのまた次の日も仕事は山積みだ。
再就職先なんて探している時間なんて微塵も無い。
会社を解雇されるその日まで。
解雇される会社の再建の為に働き、それが終わると打ち捨てられる。
会社はゆっくりと再建の道を歩み、自分はその反対へと進まされるようだ。
自分は何の為に仕事の打ち込んできたのだろう。
誰の為に頑張ってきたのだろう。
こんな絶望感を味わうための努力だったのか。
身内はおろか恋人さえいない。
こんな・・、こんな人生だったのか。嫌だ!嫌だ!嫌だ!
こんな思いをするなら・・
目を覚ますと、いつもの天井がひろがっている。
リアルすぎながらも“夢”であることに深ぁく感謝した。
この夢・・。
・・思ったんだけど“自殺した”人の記憶じゃないよね・・?
ガクガク(((;゚д゚)))ブルブル
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